全日本ピアノコンクール

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D級1位

馬場彩乃さん

都内在住ですが、インタビューをお願いしたのは、初めてのソロリサイタル開催時期。 お忙しいなか、オンラインで答えてくれました。

――1位おめでとうございます。

彩乃さん:ありがとうございます。

――率直にどうでしたか? 結果をご覧になった時は。

彩乃さん:ビデオ審査という、目の前に審査員の方がいらっしゃらないコンクールを初めて受けたので、不思議な感覚の中、あとはいつも当日に結果が出ることが多かったので、結果までドキドキしながらいたんですけれども、結果発表を聞いたときはとても嬉しかったです。

――結果が出るまでお待たせする期間があったので、皆さんどういうふうに感じてらしたのかなと思っていたんですけれども、もっと早く出たらいいのになという思いはありましたか?

彩乃さん:早く出たらいいのになというよりは、ちょっとドキドキの期間が長いなというのはあったんですけれども、でも結果が出る間「なんで早く出ないんだろう?」という感じはあまりしなかったです。

――本選に出場された皆さんは、同じスタジオで演奏していただいたんですけれども、撮り直しがないという状況ですよね。その手応えはいかがでしたか?

彩乃さん:普段の、録画でないコンクールのときも、一回勝負というのを毎回やってきているので、ちょっとカメラに見られているという感覚はあったんですけれども、その一回を集中する感覚というのはいつもどおりというか、特にいつものコンクールとかコンサートみたいに「ああ、どうしよう?」というよりは、いつもどおり弾こうという気持ちでいました。

D級1位・高校3年生馬場彩乃

――お母さまからお聞きしたんですけれども、これまでも、随分たくさんコンクールも出場されてきているんですよね。

彩乃さん:そうですね、わりと。

――その中で、さっきおっしゃったように動画での審査はこれまで経験がなかったとのことですが、今回出場しようという決め手は何だったんですか?

彩乃さん:私は毎年コンクールをたくさん受けているんですが、コロナでいろんなコンクールが中止になったんですね。自粛期間に自分でやってきた練習をお見せする場というとあれなんですけれども、人前で緊張した状態で弾くというのをやりたいなと思っていて、そのときに見つけたのがこのコンクールで。新しいものは結構好きなんですけれども、動画という新しさに惹かれまして、受けてみようかなと思いました。

――動画審査はリアルの審査と違って、ちゃんと音の響きが伝わるのかとか心配された方も多かったと思うんですね。だから逆に警戒した方もいたと思うんですけれども、それよりも新しいことにチャレンジしたいという気持ちのほうが彩乃さんの場合は勝ったということですか?

彩乃さん:そうですね。新しいものにチャレンジしていきたいというのと、動画で撮ったときに、自分の音が相手にどう聴こえて、それがどう評価されるのかというのは気になった面もあったので、私は警戒というよりはやってみようという挑戦のほうが大きかったです。

――予選は何回か撮り直しはしましたか?

彩乃さん:予選は撮り直しがきくので、日にちを分けて家で撮ったり、あとは私が提出したのはホールだったかな、家だったかな、ちょっとどっちか忘れてしまったんですけれども。ホールだそうです、母にホールと言われました(笑)。家でも何回も撮って、ホールの日に限られた1時間の中で3回ぐらい撮って、その中でいいものを選んだという形にしました。

――結構撮りましたね。

彩乃さん:撮りましたね。動画は何回も撮り直しが可能じゃないですか。その気持ちと、あとカメラに見抜かれているという感覚にあまり慣れなくて、ホールの前に、家で日にちを置いて何回か撮ろうと思いまして、それもやりました。

――少し自分を慣らしながらということですね。

彩乃さん:そうですね。

――撮り直しがきくと欲も出ますし、もう一回もう一回と終わりが見えないというようなこともありそうですね。でも、今回コンクールも軒並み中止になったり、普段のレッスンもきっとお外に出てはできない期間があったなかで、ご自分としてはどういうふうにモチベーションを保ちながら続けていましたか?

彩乃さん:普段学校があるときは、学校から帰ってきてからの短い時間で練習するんですけれども、今回私は時間があったので、ちょっとダラダラしちゃいそうなときもあったんですけれども、逆にこの時間は練習、この時間は遊びではないけれども、家で料理を作ったりとかできることをして、その楽しい時間をはさんだあとは、もう一回練習するという形で、自分が楽しいことができる時間を一日設けて、そこを楽しみに練習しようと。

――なるほど。もちろんピアノはお好きだと思いますけれども、練習を毎日するということは、楽しいだけじゃないということですかね。

彩乃さん:大変ですね。

――そうですよね。今、桐朋の音楽科に通ってらっしゃるので、学校の授業も、ピアノとか音楽に関することがメインということですよね?

彩乃さん:そうですね。普通の学校というか、音楽科ではない高校だと、きっと数学が毎日あってとか、英語が毎日あってという感じだと思うんですけれども、数学も高2か高3どっちかで取ればいいという形なので、私は高2で取ってしまったので、この1年間数学は一切触れていなくて、国語も週1回だし、英語も週2回ぐらいで、ほかの時間は何をするかといったら、他の高校にはない音楽史だったり、音楽理論だったり、和声、ソルフェージュなどの音楽関連の授業がそこにドンと入ってきて、ソルフェージュが書き取りとかなんですけど、そのソルフェージュという科目が英語と同類のレベルにいるので、週2回あって。1限が90分間なんですよ。

――高校なのに?

彩乃さん:そうなんですよ。

――すごい。

彩乃さん:その長い時間を耐えるのが結構大変です。集中が。

――そうですよね。1年生からずっと90分ですか?

彩乃さん:そうです。

――大変ですけど、集中力というのはすごく養われますよね。

彩乃さん:そうですね。

――中学生のときは普通の中学校に通っていたんですか?

彩乃さん:私は幼稚園からずっと桐朋に通っていまして。なので中学は桐朋の普通科に。でも高校の普通科と音楽科は違うらしい。名前は一緒だけれど違うよと母が言っています。中学は、音楽科はないんです。

お母さん:ご説明しますと、普通科は幼稚園から高校、短大まであると。それで、桐朋の音楽科というのは高校からで、桐朋の中学の普通科にいるからそのまま音楽科の高校に入れるというわけではないんです。外部の人たちと同じように試験を受けるという感じです。たまたま同じ桐朋に、敷地も一緒なんですけれども、音楽科と普通科は別なんです。

――そうなんですね。内部進学というわけではなくて、受験をされて。

お母さん:だから普通科にいると言ったら「そのまま音楽科に行くんだね」という感じで勘違いされる方もいるんですけど、まったく別なんです。

――彩乃さんのように桐朋にいながら、高校は音楽科に進学するために受験をしなおすという方は結構いらっしゃるんですか?

お母さん:はい。います。少ないですけどね。1年に3~4人くらい。大体は高校の普通科に上がって、でも、大学は短大しかないので4年制はみんな受験をされるんですけど、ほとんどの方はみんな高3まで普通科。一応6年間、中学高校一貫教育の学校なので。

――ピアノは何歳からやってらしたんでしたっけ?

彩乃さん:ピアノは4歳からです。

――じゃあ、その桐朋の幼稚園に通っていた頃からということですね。

彩乃さん:そうです。

――だから中学3年生で高校進学を考えたときに、当然音楽の道にということも選択肢にあったと思うんですけれども、何かきっかけというのはありましたか? もうずっと思っていたんですか?

彩乃さん:いいえ。私はいろんな事柄に手を出すのが好きで、とにかくいろんなことをやってみたいタイプなので、勉強もすごく嫌いとかではなくて、勉強方面にいったらこういうのをやってみたいというのもあったのでずっと迷っていて。極めつけは中2~中3の頭ぐらいまでは、私すごくピアノが嫌いで、ピアノを人前で弾くのは嫌いではないんですけれども、すごく練習が嫌いなので。

――そうなんですか?

彩乃さん:そうなんです。練習をすごく嫌っていて、絶対に音楽科には行かないというふうに思っていたくらいだったんですけれども、中学校3年生の夏に、北海道の夕張市にある夏期講習に行ったんです、音楽の夏期講習。そこで今習っている先生に見ていただいて、集中講座で集中して練習したり、レッスンを受けたりしたんですけれども、その時に周りにいた方、お友達もいたんですけれども、周りの方々に影響を受けて、その時初めてなのか、久々なのかわからないんですけれども、練習が苦ではなかったんです、その期間は。楽しかったかと言われると、ちょっとよくわからないんですけれど。

――正直!(笑)

彩乃さん:正直言うと楽しいかどうかはちょっとわかんないんですけれども、でも家でやっているような苦な感じは本当にしなくて、その練習期間を経た後のコンクールがもちろん緊張はしていたんですけれども、内心落ち着いているというか、ちゃんと積み上げてきたものを出せる感覚があったというか、初めてそんな感覚に陥って、その感覚がすごくはまってしまって。で、その中3のコンクールでありがたく賞をいただいたので、それをきっかけにやっぱりこっちの道に進もうかなというふうに思いました。

――それが全日本学生コンクールですか?

彩乃さん:そうです。

――全国3位。そうなんですね。小学生の頃はコンクールには出ていましたか?

彩乃さん:そうですね。チャレンジは何度か、いろんなものに手を出していました。

――夕張の夏期講習は何日間ぐらいだったんですか?

彩乃さん:2週間弱ぐらいだったと思います。

――結構みっちりですね。

彩乃さん:そうですね。他に何もないので、練習して、レッスン受けて、夜は友達としゃべるぐらいの、本当にそれぐらいしかすることがないので。

――それは全国から中校生が集まって?

彩乃さん:年齢制限はそんなになくて、人数が決められているんですね。なので、定員がいっぱいになる前に申し込んで、そこで採用されればというか、べつに審査があるわけじゃないんですけれども、その定員内に入れれば。

――でも同年代ですか?

彩乃さん:大学生から小学生まで。

――そんなに幅広いんですか。

彩乃さん:います。

――でも、中学2年生から3年生になる時に、ピアノを嫌いになりつつも、夏には講習に参加しようということは、やっぱりピアノからは離れられなかったということですか?

彩乃さん:ピアノの練習が嫌いであって、ピアノが嫌いなわけではなかったので。やっぱり中3でどっちに進むか決めないと、というときに、決めるきっかけをつくるのに自分がどっちがいいのかなというのを見定めるためにという思いも込めて、講習に参加したんです。

――でも、それは後押しになりましたね。

彩乃さん:そうですね。本当にそう思います。それがきっかけなので。

D級1位・高校3年生馬場彩乃

――練習お嫌いだとおっしゃいましたけど、コンクール前に限らずどういうふうに毎日レッスンしているんですか?

彩乃さん:時間的には大体いつも5時間くらい。

――お家だけでですか?

彩乃さん:はい。大体です。

――学校を除いてですね?

彩乃さん:そうです。

――学校でもピアノの授業というのはあるんですか?

彩乃さん:ピアノ実技の授業はないです。

――そうなんですか。じゃあ、ピアノに触る時間というのはお家で?

彩乃さん:そうです。お家だけです。

――学校もあって、5時間も練習するのは結構大変だと思うんですけど、朝とか、帰ってきてからとか、夜とかですか? どういうふうにするんですか?

彩乃さん:学校が終わる時間が2時10分なんです。早いんです。3時50分の日と2時10分の日がありまして、2時10分の日は、私、学校からお家まで歩いて5~6分程度の所なんです。なので終わってすぐ帰ってきて練習をすると、大体5時間はつくることができます。朝はあまりやらないです。

――午後と夕方と夜とという感じですね。

彩乃さん:そうです。夜のほうが私は集中がきくので。

――それはずっと小学生の時から一人で集中して練習してきたんですか?

彩乃さん:いいえ。

――最近?

彩乃さん:中学校ではだいぶそういう時間は減らしてきていたんですけれども、小学校まではほぼ毎日練習には母かお祖母ちゃんが付き合ってくれていたので、当たり前ですけどすごく効率が良くて、1~2時間くらいしか練習しなくて。周りには本当に中学生なのに6時間とか7時間とか練習する子もいたので、すごいなと思いつつなんですけれども、自分もやろうとは思わなかった。

――逆に言ったら短時間の中でも集中力がすごかったということですね。

彩乃さん:そうですね。しかも母が隣にいると集中はできます。

――プレッシャー?

彩乃さん:はい。笑

――お母さまもピアノを教えられるんですか?

彩乃さん:そうです。

――先生でいらっしゃる?

彩乃さん:そうですね、音楽教室の。

――そうなんですか、そんなに身近にいらしたんですね。そうすると、4歳から始められたのは必然的な感じ? それとも彩乃さんがご自身でやりたいという意思があったんですか?

彩乃さん:まず、やり始めたのは私の意思なんですけれども、環境的に母は家でレッスンをすることが多かったので、赤ちゃんの時から大体母がレッスンしているのを聴きながら一人で遊んでいるというのが、お留守番のスタイルだったので、常に自分の周りでは音楽が鳴っていて楽譜もいっぱいあって。それで、母がレッスンしていないときに、自分で母の真似をしてレッスンごっこをしたりとかしていて。

――それは彩乃さんが先生になるんですか?

彩乃さん:そうです。ぬいぐるみなんかに話しかけて。レッスンごっこしているのを母が見て、やらせてみようかなと思ったらしくて。たぶんそういうごっこ遊びするということは、ピアノに興味があるということなので、私の意思と言っても過言ではないのかなと。

――4歳の物心ついた時にはグランドピアノがそばにあるという環境だったということですね。

彩乃さん:はい。ありました。

――それはとても恵まれた環境にいらっしゃると思いますけれども、それでもやっぱり練習は「ちょっとあんまりな…」という感じだったんですね。

彩乃さん:そうですね。練習よりは先生のレッスンを受けることのほうが私には良いものというか、短期間でいろんなものを教えていただける場というのは、すごく好き、というより大事にしている時間で、一人で部屋に籠って練習するその時間があまり好きではない。

――でも、小さいうちはお母さまとかおばあちゃまがいらしたからやれた?

彩乃さん:はい。やれました。

――最初は先生というのはお母さまだったんですか?

彩乃さん:お祖母ちゃんでした。

――おばあちゃまも先生なんですね。

彩乃さん:そうです。なので、練習は母に見てもらって、私も音楽教室に通っていたんですけれども、ちゃんとした実技担当の先生というのはお祖母ちゃん。

――失礼ですけれども、おばあちゃまとかお母さまも音大に行ってらしたんですか?

彩乃さん:桐朋の卒業生です。

――すごい、生粋なんですね。

彩乃さん:そうですね。

――彩乃さんは、ご兄妹はいらっしゃるんですか?

彩乃さん:いません。

―― 一人っ子で。

彩乃さん:そうです。

――おばあちゃまとお母さまの愛情と期待を背負ってという感じですね。

彩乃さん:そうですね。近くに所に従兄妹が住んでいるので、小学校の時は学校が一緒で毎日会っていました。なので、お祖母ちゃんは、孫全体に愛情を注いでいたと思います。

――皆さん、ピアノをやってらっしゃるんですか?

彩乃さん:専門的にやっているのは私だけなんですけれども、従兄妹も好きでやっています。

――彩乃さんが音楽の道に専門的に進むことを決めた時は、ご家族の反応はいかがでしたか?

彩乃さん:あまり普段と変わらなかった感じもします。私が決めた道に進むことに対して、もちろん賛成してくれたし、母も祖母もピアノをやっている環境なので、そういう環境をこれからもつくり続けるよという心強い言葉はもらいました。

――そういう中で、今回1位になって。8月にはヤングアーティストコンクールで1位無しの銀賞を。

彩乃さん:そうです。

――これはオンラインですか?

彩乃さん:これはリアルです。リアルなんですけど無観客で結果発表はネットです。ホームページです。

――そうやって結果を残してらっしゃって、皆さん喜んでいらっしゃいます?

彩乃さん:そうですね。母も祖母も喜んでくれています。

――お母さまからお聞きしたところによると、高校生になって先生がちょっと厳しくなったなんていう話もチラッと聞いたんですけれども。

彩乃さん:そうですね。音楽教室で小学校の頃はお祖母ちゃんだったんですけれども、中学は別の先生について。お祖母ちゃんが先生だと、どうしても身内感でレッスンの緊張感というものはあまり学ぶことができないので、やっぱりちゃんとこの日はレッスンで他の先生に見ていただくという、その意識をつけるためにというのもあって。中学は優しい先生だったんですけれども、今ついている先生は厳しくて。

――同じ音楽教室の先生ですか?

彩乃さん:今の先生は音楽教室の先生ではないです。高校、大学の先生。

――それはご自分から「お願いします」と言って、習うことになったんですか?

彩乃さん:そうですね。自分たちでどの実技の先生につきたいかというのを決めて申請をするんですけれども。なので、中学生の時にどの先生につこうかというのを、それこそ夏期講習とかに通って、私はこの先生につこうというふうに決めたんです。

――厳しいと緊張感ありそうですね。

彩乃さん:あります。本番のように毎回緊張してレッスンに行っています。

――先生は今回のコンクールについて何かおっしゃっていましたか?

彩乃さん:コンクールの結果をご報告したときには「良かったね」と言ってくださったんですけれども、あとは講評をどのコンクールもいただけるので、それをお見せして、それを基にしながら、eコンクールもそうなんですけれども、自分の演奏が観られる場合は、それを自分で観て、その時の反省を踏まえながら次の課題と目標に向かって進むという感じです。

――今回彩乃さんは予選と本選を同じ曲でエントリーしてくださいましたね。

彩乃さん:はい。

――予選の結果を踏まえて本番まで仕上げていった感じですか?

彩乃さん:そうですね。予選でビデオで撮った音を聴いて、eコンクールがビデオ審査だから、じゃあビデオ審査ならばビデオから通った音でどうかと判断して、それが今度は審査員に伝わるから、じゃあどういうふうにしたらもっと動画越しでも私の気持ちだったり音だったりが届くのかというのを見定めながら練習しました。

――すごいですね。結果が1位ということもありますけど、出て良かったと思いますか?

彩乃さん:もちろんです。私一人でコンクール会場に行くというのも初めてだったんです。

―― 一人で来てくださったんですね。

彩乃さん:そうなんです。なるべく高校生以上は一人で来てくださいというふうに書いてあったので、一人で行ったんですけれども。

――会場まで。

彩乃さん:はい。会場から終わるまで一人だったんですけれども、そういう経験も初めてでしたし、そういう緊張を自分でコントロールするというのもいい経験になりました。本当にいろいろと貴重な経験をさせていただいたコンクールだったなというのが率直な感想です。

D級1位・高校3年生馬場彩乃

――高校3年生ですので、あと半年で卒業。半年ないですね。進路は決めたんですか?

彩乃さん:はい。私はこのまま桐朋の大学に進学するので。

――将来的に、もっと先のヴィジョンはありますか?

彩乃さん:あまり確定したものというのは、今はないんですけれども、ピアノの中でももちろんソロでも今頑張っているんですけれども、ヴァイオリンとかの伴奏をするのも結構好きなので、両方に手を出して。でも、伴奏をするにしてもソロの技術とか、ヴァイオリンの演奏を引き立てるだけの音色だったり技量が必要なので、今はどこに向かってというのはあまりないんですけれども、どの方向に進むとしても、絶対に必要であることを身につけるために進んでいます。なので、この先、たぶんいろんな道があると思うんですけれども、どの道に進むとしても、今は一本の道がつながっているので、それを走っている感じです。将来的に今はこれになりたいというのは、あまり考えていないです。

――どこに行き着けるか、楽しみですね。先週リサイタルを初めてなさったということですけれども、それはいかがでしたか?

彩乃さん:1時間半ぐらいの集中力を必要としたリサイタルだったんですけれども、いつもの12分とか15分の短さに比べると全然規模が違うので、いつも以上に緊張もしましたし、最後まで集中力を切らさずに演奏しきれるのかという不安も抱えながら、本番当日を迎えて。でも、舞台に立ったときに、おかげさまでたくさんの方々に来ていただいたので、お客さまが座っているのを見て、応援してくださっている方がこんなにたくさんいらっしゃるんだなというのを感じて、そこでちょっと頑張ろうというのと、若干緊張がふっと落ち着いた感じがして、それで演奏しました。

――すごい! 逆に人の数を見ちゃうとドキドキして、こんなにたくさんの人に見られている、間違えちゃいけない、と緊張につながっちゃいそうですが、そうではなく?

彩乃さん:来ていただいている方に楽しい空間にしていただきたいので、もちろんそういうふうになるように頑張らなきゃという緊張感は増えたんですけど、何しろ本当に人前で弾くのが私は苦でなくて、ピアノの中ではそれがどちらかというと好きなほうなので、「もう楽しもう!」というか、私も楽しい空間をつくると同時に自分もその中に溶け込むように楽しもうと思って弾きました。

――実際楽しめました?

彩乃さん:自分はすごく楽しくできました。

――それが一番ですよね。素晴らしいですね。お母さま…ありがとうございます。しっかり答えていただいて。

お母さん:そうですか。良かったです。

――お母さまも先生なんですね?

お母さん:そうですね、一応。

――お嬢さまに期待するものというのは大きいんじゃないですか?

お母さん:実は私の父方の祖母は、桐朋じゃなくて芸大の教育のほうなんですけれども、ピアノをやっていたんです。だから父の妹、私からしたら叔母さんとうちの母が桐朋で仲が良くてお友達で、そこで父と知り合ってという感じで、なのでずっとみんな音楽をやっている感じなんです。なので、実は私はどっちかというと母にやらされたという形で、嫌いではないんですけれども、彩乃にどうしても音楽をやってほしいという気持ちはあまりなかったんです。ただ、何かの習い事をさせるというときに、一番私がわかっているものといったらピアノになるので、彩乃も小さい時に私の真似事をしたりしていたので、じゃあちょっとやらせてみようかなという形で始めたんです。ピアノはやっぱり大変な世界なので、「医者とか弁護士とかどう?」と。横で教えたりすると、カーッとなってついつい教え過ぎちゃったりという部分は多々あったんですけれども、どうしても音楽のほうにという思いはあまりなかったんです。だから、最後はもう本人に決めさせて、ただ、どっちの道に行くにも迷わずに選べるような形にはしたいなと思ったので、音楽と勉強以外は、あまり考えていませんでした。

――他の何かということはあまり考えていなかった?

お母さん:バレエも小さい時に習っていましたけれども、でもたぶん行きたいと言ったら反対していたかもしれない。だから、勉強かピアノか、それは本人に選ばせようかなと思って、選ぶきっかけとして、ピアノをただレッスン受けてちょろちょろっとコンクール受けただけだったので、中3の時に初めて夕張の夏季セミナーで先輩とか音楽科の高校生とか大学生に混ざって数日集中して勉強するというのを経験させて、そこで自分で選んだらいいかなと思って、そこに初めて行かせたんです。それがきっかけでこっちに行く道になったんですけれども。

――そうなんですね。お母さまとかおばあちゃまが何となく仕向けたとか、すごくスパルタ的にレッスンをしてっていうことはなかったんですか?

お母さん:私も教えていて不思議なんだけど、自分の生徒のときには、娘と同じ状態でも我慢ができる。我慢ができて教えられるんだけど、我が子になると「何でできないの!?」と怒ったりしたので、たぶん本人はスパルタだと思っていると思います。だけど、教えている内容は同じなんだけれども、こっちも相手が娘だから、つい遠慮しないでガーッと言っちゃうところがあるので。あとコンクールの前とかは少しでも喜ばせたいというのもあったので、多少はスパルタになったんだと。あまりそれはないつもりではやってきてはいるんですけれども、本人はどうだったか。

――さっき彩乃さんもそんなに「やりなさい!」と言われた記憶はないと。

お母さん:祖母のほうが私より気持ちは強かったとは思います。

――でも、実際桐朋のご出身ということで、お嬢さんが後輩にもなるわけですけれども、嬉しさもありますか?

お母さん:そうですね。ここまできたらやっぱり頑張ってもらいたいと思っています。

――将来的にこうなってほしいなというような思いはあるんですか?

お母さん:いや、将来的には音楽の中で好きなことをやればいいとは思っていますけれども、ただ、せっかくなので将来職になるというか、今この世の中は難しいので、ソリストだけでやっていくというのはすごく大変だと思うんですね。教えたり、今伴奏が好きみたいで、伴奏はいろんな楽器とも触れられますし。一人で弾くのは孤独なので、アンサンブルですね、ヴァイオリンとかクラリネットの人とか、その楽しさというのは私も経験しているので、そっちの方面に行ってもいいのかなとは思います。好きなことをやればいいのかなと。ただ、学生のうちはソロで頑張らないと、一人で弾くソロの演奏もできて初めて伴奏もできるものなので、学生のうちはソロを頑張ってもらいたいと思います。

――本当にこれから可能性としてはまだまだ無限だから楽しみですよね。

お母さん:そうですね。可能性は無限ですけど、本人がどこまでやるかなということですね。昔はピアノというと女の子がやるものという感じでしたけれども、今は男の人ですごく上手な方がいて、体力的に力も負ける、というと変なんだけど、やっぱり男の人がほんとにやるぞとなると、女の人と違う力が湧き出てくるので、なかなか女の子でそこまでできるのかなと、ちょっと難しい世界にはなってきています。その中でこれからどう頑張っていくか、少しは期待しながら応援していこうと思っています。

――先日のリサイタルは、お母さまはどうご覧になりましたか? 

お母さん:本当にたくさんの方に来ていただいて、正直言って、娘だけどあそこまでできるとは思わなかったですね。トークもちゃんとしていたし。

――すごい!

お母さん:そうなんです。みんな演奏をするのに緊張しているから、なかなかおしゃべりできなくて、最後に「ありがとうございました」という挨拶をして終わるというのはよくあるパターンなんですけれども、娘は前半に一回挨拶して、一曲目弾いてからちょっとしゃべって、また弾いてから後半も最後にしゃべってという、「演奏というかトークが楽しかった」とみんなに言われる。

――素晴らしいですね。

お母さん:「コロナの自粛中に皆さんどのように過ごされていましたか?」みたいに問いかけのおしゃべりとかもあって、クラシックのコンサートというと、ちょっとカチッとした硬いイメージがあると思うんですけれども、高校生だからというのもあるんでしょうけれども、ちょっと柔らかい感じのコンサートになったから、皆さんにも「良かったよ」「楽しかった」と言っていただいて、初めてのリサイタルとしては良かったのかなと。周りは、私とかはもう死にそうでしたけれども、緊張して(笑)。でも、本人は楽しんでやっていたみたいなので、すごくいい経験になったと思います。お祖母ちゃん、お祖父ちゃんも喜んでいたので、お祖母ちゃん、お祖父ちゃん孝行ができたかなと思っています。

D級1位・高校3年生馬場彩乃

――お母さま、おばあちゃまが先生ですから、なおさら今回オンラインでのコンクールというのは、抵抗なかったのかなと思いますが。

お母さん:ありました。ありましたけれども、今世の中が自粛だし、受けようと思っていたコンクールもどんどん中止になって、目標がないとダラダラしてしまうので、何かないかなと思ったときに、このコンクールの審査員でもある下田先生から紹介されたんですね。

――下田先生についてらっしゃるんですか?

お母さん:いえ、違うんですけれども、高校に入る前はちょこっと「ピアノの森」というアニメの、ご存じですか? 「オーディションがあるから受けてみたら?」と下田先生からお誘いを受けて、雨宮修平だったかな、の子役の演奏も彩乃がしているんですけれども。

――そうなんですか。すごい!

お母さん:そうなんです。最初の子どもの頃だから、モーツァルトかな、その演奏は彩乃がしていて。それで今回は下田先生が「こういうコンクールあるからどう?」とお誘いくださって、「今何もないから動画コンクールで面白そうだね。やってみようか?」という感じで受けたんです。どんなものなのかというのを知りたかったのもあるんですけれども。やっぱり撮る場所とか、機械によって全然違うので、音質とか。予選はどうなるのかなというのもありましたけれども、でもちゃんと本選では一つの場所でちゃんと平等にやってくださって、これはこれでいい勉強になりました。それにもうひとつ勉強になったのは、みんなの演奏が聴けましたよね、あれは良かったなと思いました。自分はどういうところが足りないとか、いろんな人の演奏を聴いたりとか、高校生とか大学生には特にすごくいい勉強になると思いました。同年代の人の演奏を知ることはとても大事ですし。あと、審査員の先生たちが素晴らしい先生たちだったので。どんな先生が審査されるかというのもすごく大事ですよね。

――そうですよね。第一回目にもかかわらず、本当にたくさんの方がエントリーしてくださって、ハイレベルで素敵な演奏ばかり聴かせていただけて、私たちも嬉しかったです。

お母さん:良かった。こちらこそ、いい勉強をさせていただきました。

――ありがとうございました。

彩乃さん:ありがとうございました。

彩乃さんとお母さまのとても仲のいい様子が感じられる、あたたかな雰囲気の中でのインタビューとなりました。 笑顔がステキな彩乃さん、またぜひ素晴らしい演奏を聴かせていただきたいですね。